破傷風菌の原因、症状、予防接種について【致死率30%の危険な病気】

最近、救急で外傷がすごく多いです。大きなものから小さなものまでです。中には縫合したり大きな擦り傷が体のあちらこちらに作ってしまった患者さんもいます。

日本では稀なのですが外国ではまだまだ破傷風の発症も多いということで今回は破傷風についてお話をさせていただきますね。

破傷風とは何か感染経路、原因

破傷風という病気は破傷風菌というものに感染すると発症します。

致死率はおよそ30パーセントと高い確率です。

人間のどこから感染してしまうかというと傷口からの感染です。

例を挙げてみると釘を足で踏みつけてしまった、土壌のあるところで怪我をしてしまった、動物に噛まれてしまった、転んでしまい怪我をして擦り傷や縫合をしなければならないような怪我をした、大やけどをしてしまったなどが原因で破傷風に感染しやすいと言われています。

感染してしまうとその細菌がつくる毒素の働きで痙攣や開口障害などの症状が顕著になります。

この破傷風菌は泥や土の中の酸素が少ない環境を好む菌でその中で増殖、生息します。破傷風の毒素が体の神経に接合して神経の興奮を起こしてしまうために痙攣や顔の神経に悪影響を与えてしまいます。

1950年頃には年間数千人にものぼる方が感染していましたが1953年にはワクチンの接種が始まりその後は患者さんの発症は激減しました。しかし発症後の致死率は現在でも変わりありません。

破傷風の検査と診断

破傷風菌が検出されれば確定診断はできますが、検出されない微量でも発症してしまうため現在は検査をしないことが多いです。私の経験からはまだ破傷風の検査をした患者さんを見たことはありません。

顔のこわばりや破傷風菌の免疫欠如が考えられた時点で治療診断をします。破傷風に気がついたらあるいは出血や傷ができたような怪我をした場合はすぐに受診することが大切ですが、すぐに水道水で構わないので洗浄をしてください。

痙攣や全身の筋肉のこわばりなど現れたらすぐに救急車を呼んでください。

破傷風の症状、潜伏期間について

潜伏期間は2〜8週間です。しかし感染から発症まで時間が短ければ短いほど致死率は高くなってしまいます。

初期の症状としては全身の倦怠感ですがこの時期では診断はとても困難です。その次に顔の筋肉がこわばり開口障害(専門用語で牙関緊急、がかんきんきゅうと呼ばれます)が起こります。

症状から耳鼻科や歯科を受診する方が多いのですがこの時点で集中治療室のある病院を受診し診断を受けるのがその後の予後を大きく変えるポイントです。次のステージは全身の痙攣です。呼吸することができなくなるので人工呼吸器の装着など全身管理を行います。その後毒素が体の中から少なくなり回復期へと移行していきます。

破傷風の治療はどのようにして行うのか

傷口をとにかくきれいに洗浄します。病院でも水道水を用いて洗浄を行います。傷口に付着している泥や汚れを落とすことが大切です。その泥や汚れの中に破傷風菌が潜んでいるかもしれないのです。

そして場合によっては抗菌薬や破傷風菌の予防接種を注射します。このワクチンは抗破傷風ヒト免疫グロブリンで破傷風の毒素を中和して発症を抑えます。しかし残念ながら神経組織に接合してしまった破傷風菌に対しては無効です。

痙攣などに対しては痙攣を止めるお薬や呼吸、血圧管理など全身管理を行う治療が施されます。

破傷風は予防の一言です。予防接種について

小さいお子さんは三種混合ワクチンで免疫を作ります。成人は傷や出血をするような怪我をした場合は受診して指示を受けましょう。

医師の診断で破傷風の予防ワクチンを接種することがあります。

しかし完全な免疫を作るには三回の接種が必要です。

一回目は受傷時、二回目は一ヶ月後、三回目は受傷から十二ヶ月〜十八か月後で完全な免疫が五年間持続すると言われています。

破傷風はとても身近な病気です。予防も十分可能です。怪我をもし、してしまったらこの破傷風のことを思い出してくださいね。