とっても危険なクラッシュ症候群【症状と治療方法について】

家屋が倒壊したり家の中で家具の下敷きになったりして体や体の一部が挟まれ救出された数時間後にバタバタと亡くなってしまう方がいました。

詳細は後述いたしますが、原因の多くがクラッシュ症候群と言われるものでした。

1995年1月17日阪神淡路大震災が発災しました。多くの家屋の倒壊、家の中で家具などの下敷きになってしまった方がたくさんいました。体の一部が挟まれていただけだったのにまた救出した時は意識も清明で元気だったのに数時間経過後に死亡してしまった例が多く発生してしまいました。

この震災を契機にこのクラッシュ症候群が多く知れ渡り今後の災害医療のあり方が大きく変わった出来事でした。


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クラッシュ症候群とは?

先ほどもお伝えしたように家屋の倒壊やがれきあるいは室内で家具などに体の一部が挟まれた状態が長時間あった場合その圧迫から解放された時に起こってしまいます。

筋肉などが圧迫されてしまった時に筋肉の細胞が障害を起こしたり壊死を起こします。その時にミオグロビンやカリウムが血液中に放出されてしまいます。

ミオグロビンやカリウムはその時毒性の高い物質となって体の中に蓄積されていきます。その後救出されたり挟まれていた体に一部が解放された時に血流を通じて人間の体に巡っていきます。

その後に心臓や腎臓に悪影響を与えてしまい致死性の不整脈や急性の腎不全を起こしてしまい死に至ってしまうというプロセスです。このクラッシュ症候群の歴史として第二次世界大戦中に空襲でがれきの下敷きになった方が救出後に死亡してしまったという最初の報告がされています。

日本における最近の報告例では2005年のJR福知山線の脱線事故で一人の方が亡くなってしまいました。

クラッシュ症候群を疑う時

救出される時やその直後はとても元気です。しかし誤った処置と知識で対応してしまった場合数時間後に待っているのは死あるのみです。次に当てはまる場合はクラッシュ症候群を疑って対応する必要があります。

  • 尿の量が減ってきた場合
  • 尿に血が混ざってしまい茶色の尿になっている(ポートワイン尿)
  • 2時間以上体や体の一部である腰や四肢が挟まれていた場合
  • 筋肉痛や四肢のしびれ感や脱力症状が見られた場合

などです。

クラッシュ症候群の治療方法

現場での応急処置が重要です。点滴により毒素を薄めながら救出作業を進めます。しかしそれはあくまでも応急処置なので最終的には透析設備のある病院に一刻も早く搬送し診断治療をします。

なぜ血液透析をするかというと血液をきれいにするためです。血液透析や血漿交換をして血液浄化療法が最終的なクラッシュ症候群から命を守る治療方法になります。

現場などで救出作業をしてくれるのは消防の救助隊が行ってくれますが現場で応急処置や点滴などをするのが私たちDMAT(災害医療派遣支援チーム)です。消防と連携をとりながら現場での安全の配慮をしながら救命のための応急処置を行います。

参考:過去の大震災からの教訓~防ぎえた外傷死~

救急隊は現行法では生命兆候のある方に対しては薬品の投与や点滴ができません。私たちDMATの医師や看護師しか行えません。なので私たちには機動性が求められます。

災害時にはクラッシュ症候群を念頭におきましょう

医療関係者にもこのクラッシュ症候群を知らない人もいます。一般の方々にも多分知らない方も多いと思います。

このクラッシュ症候群を防ぐにはより早い救出救助が求められます。でもがれきやなどで下敷きになっている方をむやみやたらに救出救助をすることは最善の策ではないということを覚えていて欲しいのです。

阪神淡路大震災ではたくさんの方々がなくなってしまいその教訓から消防のあり方DMATの誕生やその意義が問われてきました。そしてこのクラッシュ症候群の認識です。この震災では埋もれた人を助け出しがれきの外での医療活動でしたが無理な救助は行わずに医師や看護師が救助隊員とともにがれきの下に赴いて救助活動と並行して医療活動を行うまさにがれきの下の医療に変わりました。

このような観点から私たちDMATの大規模災害訓練の内容も考え方も大きく変わりました。救助隊員とともに時として危険な現場で一人でも尊い命を救うために迅速にがれきの中の医療を行うべく訓練する場面も増えてきました。現在では消防や私たちDMATがスムーズに連携をできるようにDMATの設立や隊員養成も行われています。

クラッシュ症候群を理解しよう

がれきなどで挟まれた方がいたらいち早く救出したいというのが誰でも思うことです。

しかしこのクラッシュ症候群の知識がないとせっかく助けたとしても後々命を落としてしまう行為につながってしまうことになります。そんな人を発見したら迅速に消防に連絡して救助を待ちましょう。

救助ができなくてもそばで励ますことや付き添うだけでも立派な救助に値します。そして救助隊やDMATが到着したら情報提供を(いつから挟まれていたか発見時間は?など)していただけたら今後の救助や医療活動の助けになります。

以上クラッシュ症候群についてでした。