肺に何らかの原因で穴が開いてしまう自然気胸。
ERに勤務する私は何回もこの症例にあたったことがあります。主訴は呼吸苦と胸痛です。
若く痩せている男性に多く見られます。その訳は胸膜という膜が薄く、くしゃみや激しい咳などが原因で肺に穴が開いてしまうことがあります。通常は左右のどちらかの肺に多く見られますが時として左右両方の肺に気胸が起こってしまうことがあります。
自然気胸とは何か
前述いたしましたが自然気胸は若くて痩せている男性に多く見られます。胸膜が薄いのでちょっとした刺激や肺の中にブラと呼ばれる袋がありその袋が破けても自然気胸になってしまいます。
このブラが多く存在し気胸が繰り返されたりその可能性が高い場合は手術をする場合もあります。多くの場合は胸腔内にドレーンを留置して胸腔内に溜まってしまった空気を抜いてしまうことです。
これは局所麻酔を使うので時間にして早ければ15分くらいで終わってしまいます。しかしこのように治療をしても繰り返してしまうことがあるのがこの自然気胸の問題点です。
気胸の症状とは
気胸は突然肺に穴が開いてしまうことから次のような症状が顕著になってしまいます。
呼吸困難、咳、胸痛などです。自然気胸でも大量に空気が胸腔内に漏れ出してしまうと肺が小さくしぼんでしまいさらに心臓を圧迫してしまい心臓の動きを弱めショック症状を呈してしまいます。
気胸の診断と検査
レントゲン検査が一般的です。場合によっては胸部のCT検査を行う場合があります。呼吸音や皮下気腫などで容易に診断ができます。
気胸の治療方法
ここでは自然気胸についての治療方法をお話しさせていただきます。
ごくわずかな自然気胸なら症状もそれほど強くない場合は何も処置はせずに様子をみて自然に穴が塞がるのを待つ場合もあります。その場合は定期的にレントゲン写真を撮影して進行具合を観察します。
次に一時的に注射針などを穿刺して脱気を試みますがこれは緊張性気胸の場合の処置で自然気胸の処置ではあまりすることはありません。しかし大量に胸腔内に漏れた空気が存在したりショック症状担ってしまった場合などは緊急脱気を行います。
一番多く見られる治療方法は胸腔内にドレーンを入れる方法です。もちろん入院しなければなりません。胸腔内にドレーンを挿入してドレーンバックを接続し溜まってしまった空気を脱気していくのです。
管を挿入する部位に局所麻酔をして入れるので意識はあります。しかしこの方法はもし患者さんの肺の中にブラが存在する場合はブラの治療にはなりません。
ブラが多く存在したり巨大なブラがある場合は根治処置として手術を行う場合があります。自然気胸に対する手術の必要性としてこんなことがあげられます。
左右すなわち両側に気胸が発生してしまった場合、気胸の再発がいちじるしい場合、胸腔ドレナージを行っても空気の漏れが止まらない場合などがあります。
女性特有の自然気胸
気胸の勉強をしていて気胸は男性に多く見られ女性はなることがないんだなということを考えていました。ところが女性特有の自然気胸があったのです。私も一回だけ臨床において経験があります。
月経随伴性気胸と呼ばれるもので女性の生理の前後で発症してしまう気胸なのです。この月経随伴性気胸の原因として子宮内膜が横隔膜に広がって生理の時に横隔膜に穴が開いてしまうことによって発症してしまう気胸なのです。
気胸は女性には少ないので女性が自然気胸を起こしてしまったらこの月経随伴性気胸を疑わなければなりません。治療方法としては外科的な治療方法と月経に関するホルモンが大きく関わってくるのでホルモン療法が行われます。
気胸は身近な疾患です。病態生理、治療方法、症状などしっかり頭に入れて対処してくださいね。