遺産分割協議書の作成は誰に依頼すればいいのでしょうか。

遺産分割協議書は、相続人が自分で作成しようと思えばできないことはありません。但し労力は専門家ではないですからかなりの時間がかかります。

相続財産の内容や金額あるいは相続方法によって、遺産分割協議書作成にかかる時間がかなり異なります。

また、それ以前に遺産分割協議書が必ず必要か、というと絶対ではありません。特に資産の名義変更と相続税の申告時には必ず添付しなければなりませんから、このような手続きが予測される場合は作らなければなりません。

従って、遺産の名義変更もない、相続税の申告もない場合は遺産分割協議書の作成は必要ありません。但し、一旦凍結された金融機関の貯預金の払い出しについては金融機関によって凍結解除の方法がまちまちですので、金融機関ごとに打ち合わせが必要です。相続人合意書の提出で遺産分割協議書は要求しないところもあれば、遺産分割協議書の添付を要求するところもあるようです。

一般的に遺産分割協議書の作成を依頼する専門家は、司法書士、税理士、弁護士、行政書士の4士業です。

遺産分割協議書の作成という作業のみを考えた時には、この4士業の誰に依頼しても、制作は可能です。

遺産分割協議書作成に含まれる作業

遺産分割協議書をまとめ上げるには様々な事前、事後の作業があります。

① 相続人調査(追跡):被相続人の戸籍謄本(除籍謄本、改正原戸籍を含む)を取り寄せ、相続人の確定を行う。相続関係説明図の作成。被相続人が転居や結婚、離婚を繰り返していると、その居住していた場所全ての自治体に謄本の発行を依頼します。

② 相続財産調査:被相続人の遺言書があり、そこに全て財産が記載されていれば、手間はかかりません。しかし相続財産のリストがない場合は、相続人あるいは代理人が調査して作らなければなりません。100%完全に調べ上げないと、遺産分割協議書を作ってしまってから、新たな財産が発見された場合は、再度相続人全員で協議して再制作となります。

不動産や株式がある場合は、専門家に依頼して評価額を出してもらいます。素人ではほとんど手が出しにくい分野で、かなり難しい法的な解釈が必要な場合もあります。この作業には別途に費用がかかります。

③ 遺産分割協議書の作成:上記①、②の手順を得て、相続人全員で協議を行い、誰に何を、どれだけ相続するかを決定します。相続人の代表者が決定した協議内容を制作代理人の司法書士や税理士に手渡して作成します。この時に相続人全員の戸籍謄本、住民票、印鑑証明書、実印などが必要です。

但し、遺言書のある場合は、その遺言書が法的効力を有します。原則、遺産分割協議書は必要ありません。但し、遺言書の中に、遺留分の配慮がされていない場合、法的な必要事項が記載されていない遺言書の場合は、遺産分割協議書の方が優先します。遺言は公正証書遺言か又は、それ以外の遺言書で開封されていない状態で裁判所の検認を受けたものでなくてはなりません。

遺産分割協議書の作成依頼と費用

遺産分割協議書の作成は、4士業であれば、すべての士業で可能です。

〇司法書士:遺産分割協議書の作成以外に、相続財産の名義変更登記、家裁への遺言書検認手続き、家裁への相続代理人の申立て、家裁への相続放棄の申立て、家裁への遺産調停申し立てなどもできます。遺産分割協議書の作成費は、5万円以上でその他の費用を入れて15万円くらい。

〇税理士:遺産分割協議書の作成以外に、相続税の申告手続きができます。遺産分割協議書の作成費は5万円から15万円くらいですが、不動産や株式などの評価手数料は別途にかかります。相続税の申告には相続財産によって異なりますが、相続財産5千万円くらいであれば35万円から45万円くらいかかります。

参考:相続税専門の税理士の探し方、選び方について

〇弁護士:遺産分割協議曾作成以外に、家裁への遺言書検認手続き、家裁への相続代理人の申立て、家裁への相続放棄の申立て、家裁への遺産調停申し立て、紛争調停手続きなどもできます。遺産分割協議書の作成費は、一般的に作成だけの依頼は受けないでしょう。受けるとすれば5~6万円です。裁判所の費用はそれぞれの事案ごとに相談してください。

〇行政書士:遺産分割協議書までの作業は可能です。これ以後の諸手続きは他の士業に受け継ぐことになります。

遺産分割協議書の作成費は、行政書士が最も安い傾向にあります。作成費の平均が5万円くらいで、その他、調査費、手続き費用が5万円から7万円くらいかかります。

まとめ

上記に遺産分割協議書の作成の費用を各士業別に記しましたが、かなり大雑把です。参考価格として見てください。

相続関連の事柄を専門家に委託した場合の費用は、ネットなどでたくさん出ていますが、実際の価格を知る場合は、見積を数か所から取り寄せて検討するのが一般的です。

場合によっては倍近い開きが出る場合もあります。

また、遺産分割協議書の作成を専門家に依頼した場合、注意しなくてはならないことは、基本的な費用以外に多くのオプション項目がある事です。それぞれに別途に費用がかかります。

例えば

  • 遺言書があるかどうかの検索、調査
  • 相続人調査、相続関係説明図の作成
  • 戸籍謄本の収集
  • 不動産の基本情報の調査
  • 不動産の名寄せ
  • 貯預金、有価証券の残高調査
  • 借金、ローン調査
  • 名義変更、解約手続き他

他にも色々あります。遺産分割協議書の作成と、それに関連して、どんな作業があるのか、あらかじめよく調べておく必要があります。おまかせにすると、思わぬ金額となってトラブルになる恐れがあります。

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