創業融資制度は日本政策金融公庫と全国都道府県及び市区町村(制度融資)などで実施されています。今回は、日本政策金融公庫の創業融資制度の事業計画書(創業計画書)についてご紹介します。

事業計画書に記載しなければならない項目は、日本政策金融公庫でも、地方自治体の制度融資でも同じです。

日本政策金融公庫の創業融資制度は各種ありますが、次の3つが代表的な制度です。

〇新規開業資金:新たに事業を始める方、又は事業開始後おおむね7年以内の方

〇女性・若者/シニア起業家支援資金:女性又は30才未満か55才以上の方、又は事業開始後おおむね7年以内の方

〇再チャレンジ支援融資(再挑戦支援資金):廃業歴等のある方で、新しく事業を始める方、又は事業開始後おおむね7年以内の方(違法な廃業事由がないこと)

〇無担保無保証の新創業融資制度については、手続き方法は上記の制度に準じます。

創業融資制度申し込み書類(参考)

・ 創業計画書(事業計画書)
・ 借入申込書
・ 設備資金の場合は見積書
・ 登記簿謄本(法人の場合)
・ 担保のある場合 登記簿謄本
・ 資金繰り表
・ 許認可証(許認可が必要な場合)
・ 他

詳細は日本政策金融公庫のHPをご参照ください。

創業計画書(事業計画書)の意義

創業融資制度の審査は難関です。創業計画書(事業計画書)は、借りたお金は確実に返済できる見通しを持っています、ということを主張する書類です。

実績がないため、事業で利益をあげて、返済が本当にできるかどうかわかりません。未知の世界です。融資を受けたい人が、計画書で、自分の持っている情熱や熱意、強いやる気を伝える、これが計画書の目的です。

しかし、日本政策金融公庫の審査を担当する審査官は大変です。計画書と融資を受けたい人の人柄だけで、融資の可否を判断しなければなりません。当然ですが、審査は厳しく、極力リスクが少ない人を選択するようになります。

日本政策金融公庫の創業融資は、新創業する人を積極的に開発、応援する国の支援機関です。

新しい事業に挑戦する人を増やしたいわけです。事実、この制度を受けて事業を起こした人は非常にたくさんいます。

政策として新創業者を増やしたいのですが、もともと原資は税金です。融資の審査基準を甘くして多くの新創業者を増やしても、すぐに事業が立ち行かなくなったり、倒産などして貸したお金が回収できなくなったら、納税者から厳しい追及に合います。

公庫の審査官は、このように貸したいが簡単には貸せない、という難しい立場で日々審査していることを理解しなければなりません。

創業計画書(事業計画書)のポイント

創業計画書作成の前に知っておいて欲しいいくつかのポイントがあります。

〇お金を借りるという意味:一般の銀行からお金を借りる場合、最初に現在取引があることを前提として、融資の場合は、担保、保証人は当然で、決算書が過去数年にわたって黒字という状況がないと難しいです。従って、新商品開発とか設備資金、業務拡張などの資金が目的となります。

このように、新しく事業を始めようとする人に対しては、最初から門とが開かれていません。

お金を借りようとすると、このように一般的には担保、保証人とさらに実績があってはじめて交渉のテーブルにつくことができる。ということを知らなければなりません。

〇創業融資は必要額が融資されるとは限らない:創業時には、店舗の確保、改築、従業員募集、機器の購入、広告宣伝など初期投資の資金だけでなく、開業しても軌道に乗るまで、売上が予定通り上がるまで、運転資金が必要ですから、創業資金は余裕をもって見積もっておく必要があります。

この創業必要資金を全額創業融資で賄うことは現実的ではありません。2,000万円を申し込んで1,000万円で決定される場合も多いからです。審査は要求通り通らない可能性があることを理解していなくてはなりません。返済期間や、担保有り無し、保証人有り無し、計画書の信頼度、申込融資額などのよって、審査官が判断します。

〇創業融資は開業して1年目が通り易い:創業融資の対象は新しく事業を始める人及び開業して7年以内の人、となっています。開業して1年経ち、1年目の決算書があり、少ないが利益も出して、税金も納めた。つまり順調に経営が推移しており健全な状態にある証拠が示された場合が、最も審査が通り易いようです。

実は、開業して1年以上経過した人の融資依頼が最も多い、と報告されています。公庫の審査官のリスクがかなり低いですから、当然なのでしょうか。

〇融資を受けたい金額と同額の自己資金がある:地方自治体の制度融資ではほとんど必須の条件ですが、公庫の融資でも、自己資金があった方が、審査が通り易いです。

〇担保や保証人がある:お金を借りる時の基本条件です。新創業融資制度は、無担保無保証が特徴ですが、新規開業資金の制度は、条件として相談となっています。条件次第では無担保無保証もあり得ます。という意味ですが、現実にはかなり難しいでしょう。担保や保証人があった方が、当然審査が通り易いです。

公庫から融資を受ける前提として、上記のようなポイントがあることを十分認識した上で、計画書を作りましょう。無担保無保証でお金を借りることがいかに大変なことか、公庫に提出する、創業計画書の内容がいかに重要であるか、ご理解いただけたでしょうか。

創業計画書が、担保、保証人、実績、の代わりにならなくてはならないのです。

まとめ

日本政策金融公庫の創業融資は魅力ある創業支援融資制度です。実績や担保、保証人がなくて新しい事業を行いたい人にとっては、なくてはならない制度です。

事業を立ち上げたいからお金を貸して欲しい、と公庫に依頼すれば、積極的に貸してくれます。但し条件がいっぱいついています。この条件が厳しいために誰でもOKとはいかないところがとても悩ましいところです。

担保なし、保証人なし、実績なし、自己資金なし、が最も審査が厳しく、これらの有り無しによって順に審査が通り易くなります。これが最大のポイントです。