特殊な外傷コースと看護師【ITLS(インターナショナルトラウマライフサポート)講習】

看護師が受講できる講習会は沢山あり、内因性のものや外傷によるもの様々です。また、病院前外傷コースではJPTECITLSというものがあります。

JPTECは日本の現行法にのっとり緊急度や重症度の高い傷病者に対しての処置観察を行いいかに早く医療機関へ搬送するというものです。

ITLSはアメリカ救急医学会認定の病院前外傷救護コースで高度な医療処置、薬品などを使い救護するというものですが、日本の現行法では行えないものばかりです。しかし知識や技術は学べます。

今回は私もインストラクターの資格を有するITLSのお話をさせて頂きます。(JPTECについては病院前外傷救護と看護師【JPTECの受講のすすめ】の記事参考)

ITLSの研修コースについて

ITLS(インターナショナル・トラウマ・ライフ・サポート)はいくつかのコースに分かれています。

  • 成人やJPTECに近い病院前外傷救護のコースでアドバンスコースベーシックコース
  • 小児の病院前外傷コースでペディアトリックコース
  • 車両事故などで事故車両の中から救出するアクセスコース

等があります。

ITLSのアクセスコースについて

看護師とは少しかけ離れた業務内容ですが、アクセスコースの内容についてご紹介します。

看護師もこれから業務の拡大で現場に出ることがあるかもしれません。DMAT(特別な訓練を受けた医師、看護師、事務員からなる機動性のある災害医療派遣チーム)の隊員でもある私も、もしかしたら現場に出る可能性はあります。車両事故が目の前で発生した場合119は必ずするとは思います。救急隊、救助隊が必ず来てくれます。

アメリカの場合広大な土地柄、救急隊が先着しても救助隊が遅れてくる、あるいはその逆があります。救急隊は救助を専門にはやっていません。救急車には救助専門の道具も搭載はしていません。最低限の資器材しか搭載はしていません。その最低限の資器材を使って救助隊の到着が大幅に遅れる場合など救助するというのがアクセスコースのコンセプトです。

アクセスコースの講習会はかなり危険が付きまといます。受講者も救急隊、救助隊警察や自衛隊の救難救助部門の隊員がほとんどです。

そんな中、看護師は一コースの中で一人いるかいないかです。ドクターも受講していますが、受講の割合は看護師と同じくらいになります。講習会ではヘルメット、目を保護するゴーグル、ケプラー製の手袋、防火衣編み上げブーツ(つま先に鉄板が入っているもの)を装着し、本番さながらの装備で実技を行います。

ITLSアクセスコースの流れ

午前中はインストラクターによる講義が行われます。車両事故の特殊性や安全に関すること、最近では乗員保護装置が車に何か所も取り付けられていることや、車両破壊して救出の手だての説明などみっちり講義を受けます。そのあとテストがあり昼食後実技が始まります。

実技は実際の廃車になった車両を使います。

会場の駐車場で四台から五台用意して一台当たり二つのチームで使用します。受講生に車両の中に入ってもらいもう一つのグループがその車両をゆすったりハンマーでたたいたり衝撃を与えます。事故車両の中に取り残された人の気持ちを知るというのが狙いです。

完全装備とはいえ車両の中は恐怖心さえ感じます。要救助者の方はパニックになり体は傷つき最悪のコンデションです。心理的に落ち着かせるのも救助者の役目です。シナリオや事故車両の状態によっては救出や救助の方法が違ってきます。屋根を切断して救助するのか、ドアのみ破壊して中に救助者が侵入しトリアージするなど様々です。要救助者の怪我の度合いによっても救出方法や順番が違ってきます。

電動のこぎりやハンマーの大型のものガラスを破壊するポンチ、ガラスそのものを切ることが出来るのこぎりなどの特殊な機械も使い、破片が飛び散るので大変危険です。一見して看護とは関係ない講習会ですが決して無駄ではありません。このような車両事故に遭遇しないとはいえません。そんな時、看護師として出来ることが必ずあるはずです。

それがITLSのアクセスコースです。

看護についての疑問があれば質問をどうぞ。

私はER看護師でDMAT隊員です。責任のある大変な仕事ではありますが、充実した日々を送っております。もうベテランというほど看護の歴は長いです。何か役に立つことはないかとこのブログを始めました。看護についてわからないことがあれば、ここの記事にコメントかもしくはtwitterのアカウント@tomcatf143までご連絡ください。返信は遅いですが、わかる範囲ですが、お答えいたします。