ER看護師の私がDMAT隊員に選抜されたとき

救急外来、ER、救命センターなど呼び名は違えど救急部門で働いている看護師さんも多いと思います。

私も北米型のERに勤務する看護師です。今更説明をするまでもありませんが、勤務するERはとりあえずどんな患者さんでもいらっしゃい初期対応しますよというスタイルです。専門的な治療が必要な場合は各科の医師に引き継ぎを依頼します。

どんな患者さんでも受け入れて容態をこれ以上悪化させず安定化させるのがERの重要な使命の一つです。そこで働くER看護師も医師と協力しながら患者さんの検査や治療を行います。

それらとは別に私には別の任務があります。それはDMATの隊員であることです。

DMATは簡単に説明すると災害時において機動性がある特別な訓練を受けた医療チームです。構成はチームによって若干の違いはありますが医師が二人看護師がに名事務員が一名という構成です。大きな災害が発生して国や都道府県から要請があれば出動します。これが他の看護師と大きく異なる点になります。

私がDMATに選抜された理由

四回目の転職で現在のERに勤務しています。今のERに勤務する東日本大震災が発災しています。どうしても救急と災害医療に力を入れている病院に転職したいそう思い転職を決意しました。

その願いが通じて転職ができたのですが面接の時に今でもはっきりと覚えているのですが面接が終わりに近づいた時に面接官から「何か質問やご要望はありませんか?と聞かれた時に

「私は救急を希望しています。救急以外の配置ならこの病院に勤務したくありません」

と言い残して面接を終了しました(みなさんは決して真似しないでくださいね)。

後から考えたらやはり「まずいことを言ってしまったかな?」と後悔をしてしまいました。

しかし考えはすぐに変わりました。救急がやりたいのに他の部署に配置されて悶々と仕事なんかはできないと。結果は翌日には連絡があり見事採用を勝ち取りました。DMATへの道はそこから始まりました。

ちなみに、その時お世話になった転職会社はマイナビ看護師です。

参考:私が転職を成功させた方法【DMATになるまでの経緯について】

DMATに選抜された日

そこから約半年が過ぎて行きました。

院内でDMATを結成するという話を小耳に挟みましたがどうせ自分には関係のない話だろうなと軽く聞き流していました。ある日師長から呼び出しを受けました。思い当たることは何もなかったのですが内心ドキドキしてしまいました。

「看護師の中からDMATを二名選抜することになったのですが救急の医師からあなたがいいという声が高かったのですがどうですか?やってみますか?」

と願ってもいないお話をいただきました。長年なりたかった憧れていたDMAT。

どうしてもなりたくてDMATの拠点に問い合わせまでして個人ではDMATにはなれないと言われた時、東日本大震災で個人的に医療支援に参加しようとした時勤務先にお話をした時にも許可されなかった時非常に悔しい思いをしたことそれらが一気に報われた瞬間が訪れたのです。

返事はもちろんYES!です。

病院に感謝、自分のことを認めてくれた医師たちに感謝。一生忘れられない出来事の一つになりました。

他の病院では希望者を募って選抜試験を行いそこから合格者をDMATに起用するということが多いと思います。そんな苦労はせずにDMATになるべく研修を受けることができる切符を手に入れたのです。

私はたまたま周りの方々の私見で選抜をしていただきましたがこれはすごく稀な例だと思います。こんなことはまずないと思ってくださいね。

DMAT隊員でもあるER看護師の日常とは

平時においては皆と同じ看護師なので通常の看護業務を勤務表に基づいて業務をこなしています。仕事が終われば帰宅してテレビを見たり食事をしたり休日には趣味で出かけたりします。

でも携帯電話とパソコンのメールアドレスは厚生労働省保健局に登録されていて待機命令や参集命令が送られてくるので携帯電話は二十四時間三百六十五日手放しておくことはできません。それ以外は皆と一緒です。

過酷なDMAT隊員養成講習

DMATは全国の病院からDMATの拠点病院に養成講習を受けるためにたくさんの医師、看護師、事務員や他の職種の方々が集まります。簡単な四日間の養成講習の内容の説明が行われそのあとはもう講義が始まります。朝八時から夕方というよりは夜の七時まで講義や実習が行われます。

災害時に多い外傷の講義、内因性の病気の講義などとにかく災害に関するたくさんのことを学びます。変わった講義ではトランシーバーの取り扱いの講義です。話し方操作の仕方、特性など。取り扱いや話し方のテストまでありました。テストはテストなので合格しなければなりません。それがきっかけで趣味の一つとしてトランシーバを始めました。

参考:2015年8月看護師日記 ~無線機に夢中~

トランシーバーは普段から取り扱っていないと訓練などでも取り扱うのでなれるという意味でも個人的にも購入してみました。

トリアージ訓練では実際に医師と二人一組になり災害現場に見立てた現場でトリアージを行いましたその時は消防や警察の救助部門の方々も参加して非常に熱が入りました。

そのあとはトリアージされた方々が収容される救護所での治療の訓練が始まりました。酸素投与、点滴、カテーテルの挿入その中から誰をどこの医療機関に搬送するかなど本格的な訓練も受けました。

最後は修了試験を受けて合格すれば晴れてDMAT隊員の誕生です。毎回残念ながら不合格者がいるそうです。私たちの病院から参加したメンバーは全員合格です。

二ヶ月後、私のもとにもDMATの隊員の証となる隊員証が手元に届きました。

それはいつでもどこへでも被災されて困った方々の力になるぞ!という証です。

どんな時も臆することなく出場することがあれば全力を尽くす。その信念はとても熱く自分でも感じます。