老人ホームでの救急搬送体験【老人ホームの派遣看護師】

看護師を長くやっていると患者さんの急変というものに当たることがあると思います。病院ならドクターを呼んだり他のナースを呼び応援を要請することができます。病院以外での施設ならどうすれば良いでしょうか?

私は以前に有料老人ホームに派遣看護師として赴いていたことがありました。

老人ホームの看護師の仕事とは

病院と違い老人ホームは治療する場所ではありません。入居者の方が生活する場所です。文字どうり家ですね。そこでも色々な職種の方が従事しています。資格を持たない介護がメインの仕事の介護士(ヘルパーと呼ばれることがあります)、ケアマネージャー、食事を作ったり献立を考える調理師、栄養士、事務員、そして我々健康管理をする看護師です。

老人施設にも種類があり看護師が二十四時間常駐するところもありますが、私が勤務したところは朝九時から夕方六時までの勤務です。老人施設の看護師の仕事も場所によっても様々ですが大体ですが全国共通だと思います。血圧などのバイタルサインの測定、食事介助、入浴介助、服薬管理、投薬、病院受診の付き添い実に多くの業務があります。

老人施設の仕事というと印象的にはERで働いている私から見るとのんびりしている、穏やか、平和、のんびりしているということが印象的でしたが決してそのようなことはありません。

老人施設の入居者さんは高齢です

高齢の方が多いのは当然ですね。ゆえに一人でたくさんの基礎疾患を持っています。心臓病、糖尿病、高血圧、既往歴も、もちろんたくさんお持ちですね。それらがいつどこで悪さをして容態を悪くするかわからないところも多々有ります。そして認知症も患っているので突発的な事故もあります。例えば誤飲があります。トイレットペーパーを食べてしまった、オムツを食べてしまったなどです。

怪我も多いですね。やはり筋力が落ちているので転倒、ベッドからの転落、嚥下する力も弱くなっているので食事などを容易に窒息してしまったり誤嚥性肺炎を起こしたりしてしまいます。経験では台所に置いてあった洗剤を飲んでしまったり廊下で転んでしまい大腿骨の頚部骨折、食事を喉に詰まらせた。非常に怖いですね。

そうなった場合は手をこまねいて見ているわけにはいきません。これ以上悪化させないように、容態が少しでもよくなるようにできることを最大限の努力を看護師はしなければなりません。止血をする、吸引する、固定する、蘇生処置をする、酸素を投与する応急処置をします。医師はいないのでフィジカルアセスメントをしっかり行いそれに合わせて処置を行います。

それでもダメな時は病院受診をしますが緊急でなければ介護タクシーで受診をしますが緊急で一刻を争う場合には消防の救急車を使います。

老人ホームでの救急要請体験

その日の朝も特に最近は入居者の方は落ち着いているから特変もないだろうなと軽い気持ちで出勤しました。ところが玄関を入り更衣室に向かおうとしたら夜勤の介護ヘルパーから

「三階のAさんが今朝の七時頃に息が苦しそうだったのでサチュレーションを測ったら79%でした。」

すぐにその部屋の方のところに駆けつけました。

呼吸状態や酸素濃度も落ち着いていましたが、顔色も悪く胸の音を聴診しサチュレーションを頻回に測定し吸引やベッドアップをしてあらゆる処置を施したら一時的にですが安定しました。一時間半くらい経過したでしょうか?顔色が悪くサチュレーションも低下し明らかに低酸素による意識障害を起こしていました。

酸素があれば投与をしたかったのですが、その施設に酸素はありませんでした。受診がすぐにでも必要と判断し施設長、家族に連絡、介護タクシーでもいけるかなと思いましたが酸素投与ができないことがわかり介護タクシーでいつ車内急変するかわからなかったので消防の救急車を呼びました。

119をして施設名、所在地、通報者、搬送者の情報や容態を簡単に伝えます。その後救急隊の酸素投与が功をそうしたのか容態が良くなりかかりつけの病院に搬送してもらいました。結果は心不全の急性増悪ですぐに入院となりました。救急搬送の付き添いはごくたまにありますがとても緊張しました。

高齢の方の容態変化や外傷は突然起こります。いつでもそれらに対処できる判断力、力を身につける必要が高いなと思った出来事でした。

参考:老人福祉施設において看護師と介護士の役割・業務の違い