大動脈解離の原因と症状、予防方法について

ある俳優さんが大動脈解離破裂で亡くなってしまいましたね。ご記憶にあると思います。

参考:阿藤快さんを襲った大動脈瘤破裂…予兆や予防策はあるのか

救急の疾患でも意外と多い疾患の一つとして大動脈解離もあります。決して珍しい病気ではありません。

今回はこの大動脈解離についてお話をさせていただきます。

大動脈と大動脈解離について

まず大動脈を説明させていただきます。大動脈は心臓から出て胸部や腹部に至るまで体の中を走る血管としては最大のものです。この大動脈が胸部で太さが約3㎝腹部でも2㎝もあります。

この大動脈が動脈硬化などで血管の内側の弾力性が失われてしまい様々な異常をきたすようになってしまいます。そのような状態の時に血圧が高いと風船のように膨らんでしまう瘤になってしまいます。

これが大動脈瘤といいます。そしてこの血管に亀裂が入り裂けてしまう病気が大動脈解離なのです。

高血圧の方は要注意

とても致死率が高い病気です。早急に適切な処置を施さないと血管が破裂を起こしてしまい大出血となり心タンポナーデなどの合併症も併発してしまい命がなくなってしまいます。緊急手術を受けても致死率は30〜50%にまで及びます。

このことから予防が大切になってきます。もっとも注意しなければならないのが高血圧です。動脈硬化の原因にもなりますが大動脈が膨らんだり亀裂が入ってしまう原因になります。十分に注意しましょう。

大動脈瘤と破裂の症状について

大動脈瘤は胸部大動脈瘤と腹部大動脈瘤の二つに分けられます。瘤という文字の意味はこぶを意味します。通常が2㎝の大動脈が2倍程度まで膨らむと手術が必要と言われています。

発症してしまう年齢層は男性がやや多く70歳代がピークです。50歳代から徐々に増えていきます。

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また大動脈瘤は一気に大きくなるのではなく時間をかけて少しずつ大きくなっていくので高血圧や動脈硬化に十分な注意が必要です。

主な症状ですが大動脈瘤ができてしまっても血液は破裂するまで普通に流れています。そのため痛みというものが破裂するまでありません。

でも直接的な前兆とは言えないかもしれませんが胸部大動脈瘤の場合膨らんでしまった血管が周囲の器官を圧迫してしまい声帯の神経ならばしわがれ声になったり気管を圧迫すれば呼吸が苦しくなります。さらに食道を圧迫すると飲み込みが悪くなる嚥下障害が起こってきます。

腹部の大動脈瘤の場合はお腹のあたりに拍動性のものが容易に触れるようになってきます。

以上のような症状が出てきたら急いで病院を受診するか場合によっては救急車を呼ぶ必要があります。

破裂をしてしまうとこんな症状が出てきます。

胸部大動脈瘤の場合は呼吸困難や胸や背中に強烈な痛みを感じます。

腹部大動脈瘤が破裂してしまうとお腹や腰廻りに強い痛みが感じます。しかしもっとも注意しなければいけないのが高齢者の方です。知覚神経の機能低下が見られるので我慢できる痛みで様子を見ていたら手遅れになってしまったということがあります。

大動脈解離の正体

大動脈は3層構造になっています。一番内側が内膜で真ん中が中膜そして一番外側が外膜という構造になっています。大動脈解離は血管の一番内側の内膜に亀裂が入り血液がそこに流れ込みます。

そうなると中膜の剥離が始まる。これが大動脈解離なのです。中膜の剥離が進んでいくと外膜まで破けてしまい大出血を起こしてしまい致命傷となります。大動脈解離の場合は人生最大の痛みを経験してしまいます。

私たちが勤務するERでも強い痛み止めを使用しても一時的には痛みが治まるのですがすぐに痛みが出てしまうことがありました。その痛みは見た目にも強い痛みというのがはっきりわかります。

顔色が悪くなりもがき苦しんでいるという状態です。麻薬に近い痛み止めを使っても一時しのぎにしかならない場合は麻薬の注射を使わなければならなくなります。そして痛みも広がっていきます。

大動脈解離の場合の場合も前兆となる症状がほとんど見られないことがあります。

でも亀裂が入ってくると内膜の一部が剥がれてしまい他の動脈を塞いでしまうことがあります。そうなってくると塞がった部分から血液の流れが途絶えてしまうので腕や足の脈が弱くなり血圧に左右差が出てきたりします。

その他として腎障害や心臓発作、手足の神経症状などが出てきます。

大動脈解離の治療方法と予防方法

まず激しい痛みを取り除かなければなりません。痛みが強ければ体にそれだけ負荷がかかってしまい血圧が上がります。血圧が上がってしまうと解離が進んでしまい出血を助長することになってしまい大変危険です。

そして血圧のコントロールです。降圧剤を使用して血圧の上昇を抑えます。手術は開胸あるいは開腹手術をして人工血管を置換する手術。カテーテルなどで狭くなった大動脈にステントグラフトという特殊な金属でできたものを狭くなった大動脈に挿入する処置があります。どちらもリスクはとても高いのでそうならないように予防を心がけるようにします。

生活習慣の見直し(喫煙、食生活、アルコールの摂取量、運動量)大動脈瘤も大動脈剥離も高血圧が天敵です。血圧コントロールをしっかり行いましょう。脂質代謝異常や糖尿病は動脈硬化を促進してしまいます。原疾患の治療やコントロールをしっかり行いましょう。

早期発見、早期治療そして予防が大動脈解離から命を救うのです。