困った患者さんに対する看護対応の体験

看護師は対人間の職業です。この世の中には男がいて女がいて容姿も顔も千差万別であるように性格も色々です。性格や個性もいいものなら対人関係も苦労はしません。しかし自己中心的だったりわがままだったりすると困惑し、苦労します。

看護の世界でも患者さんとのかかわりが大部分を占めるでしょう。皆いい患者さんばかりとはいえません。今回はそんな看護師泣かせの患者さんの話をしたいと思います。

アルコール中毒の困った患者さんの話

精神科の閉鎖病棟に勤務していたときです。文字の通り鍵がないと入れない、出られなという病棟です。そこにはアルコール中毒や統合失調症、躁鬱病の方が多く入院していました。状態が安定すると主治医から外出や散歩、外泊の許可が下ります。

アルコール中毒の患者さんでAさんという方がいました。とても口数が少なく断酒会にもまじめに参加し治療にも積極的で退院間近という方でした。社会復帰の第一歩として一人暮らしをするためのアパートもケースワーか同伴で探し契約も無事に済んだところです。

ある朝、散歩が許可されているAさんが中々帰棟しません。どこかで倒れているかもしれないという考えが時間の経過とともに大きくなり焦りも激しくなりました。散歩は院内の敷地内しか許可は出ていません。病院の前には大きな墓地があり季節はちょうどお彼岸の時期だったのでお供え物がたくさんしてあるところでした。

嫌な予感がしてその墓地に向かったところ顔を真っ赤にして座っているAさんを発見しました。

酒臭く呂律が回らない口調で言い訳をしていましたが、もう遅いです。なんとお墓にお供えをしていたワンカップの日本酒を飲み干したとのことでした。介助すれば歩行は可能だったので肩を貸して病院まで戻りました。すぐ主治医や病棟に報告をして診察を受けました。酒気を帯びている意外は異常がなく個室に収容になりました。

いうまでもなく退院は取り消しとなり、契約したアパートも契約破棄になってしまいました。私がびっくりしたのはそこまでしてまでお酒が飲みたいのかな?ということとお供えがしてあるお酒を飲んでしまって罰が当たらないのだろうか?ということでした。

困ったヘルニアの患者さん

もう一つは鼠蹊ヘルニアを手術したBさんという患者さんです。

長年患っていた鼠蹊ヘルニアを手術をしました。腰椎麻酔と全身麻酔で術後の経過もよく手術直後の夜勤で私が担当しました。食事は明朝から水分は夜の零時をからトイレ歩行も明朝からとの指示でした。

術後のバイタルサインもよく痛み止めを一回使っただけでした。食事や水分摂取、トイレ歩行のこともきちんと説明して理解したと思っていました。巡視時も疲れたのかよく眠っていて点滴の調節をしたりして記録し他の患者さんも異常がなく消灯時間の夜九時になりました。手術後の患者さんは一人だけだったので他の夜勤業務をこなしているうちに夜中の一時近くになっていました。

私はトイレに行きたくなり患者さんが使うトイレに行きました。中に入り用を足していた方が一人いたのに気がつきました。持続点滴をしていたので気になりふっとよく見たら鼠蹊ヘルニアの手術を受けたBさんでした。安静度は朝からトイレ歩行可だったのですごくびっくりしてしまい思わず「歩いては駄目じゃないですか」と少し口調が強くいってしまったところ「もう大丈夫かと思って。でもそうっと歩いてきたから大丈夫!」と悪ぶれた感じもなくいわれてしまいました。

すぐに車いすを取りにいきトイレの中から部屋まで車いすに乗せてベッドまで戻しました。夜勤の医師がちょうど担当医だったので事情を説明してすぐに診察をしてくれました。幸い傷口に異常なく鼠蹊部の出っ張りもありませんでした。術後に負荷をかけすぎると固定をした腸が再び飛び出してしまうからです。その後は口酸っぱく注意し巡視も見張っている訳ではなかったのですが頻回に行いました。

皆さんの周りにもこんな困った患者さんはいませんか?