一刻の猶予も許せない緊張性気胸の症状等をもう少し詳しく解説してみます。

あまり見かけることは少ないのですが、外傷救護の現場における緊張性気胸のお話をさせていただきます。

緊張性気胸は胸部の致死的損傷の一つです。

病院に運ばれても診断から治療まで30分以内に治療が開始されないと命を危険に陥れてしまう疾患です。


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漏れた空気が肺や心臓を圧迫

緊張性気胸なんてあまり聞いたことがない方も多いのではないでしょうか?自然気胸は臨床でも多く見かけます。どのような時に起こってしまうかというと交通事故のようにハンドルなどで胸部を強く打撲した場合(胸部を何らかの原因により強く打撲した場合)すなわち外傷などで発生してしまうことが多く見られます。

なぜ緊急で処置をしなければいけないかというとそれは病態生理にあります。

少し専門的な言葉が入ってしまいますが胸腔内に空気が入り込んでしまい肺をその空気が圧迫してしまい空気を取り込めなくなってしまうからです。その状態が継続してしまうとショック状態を呈してしまい重体となってしまいやがて生命の危険を脅かすことになってしまいます。

もう少し詳しくお話をさせていただくと呼吸困難から始まり漏れた空気が胸腔内の心臓や大きな血管なども圧迫してしまって頻脈や呼吸状態の悪化から循環障害、そしてやがて血圧の低下を起こしてしまいます。

医療的処置以外での応急処置は酸素投与と傷病者の方が楽な姿勢をとる以外何もできません。したがって現場では状態が進行してもできるだけ早く早期搬送が求められます。

現場での応急処置としてまだ医師にしか許されていませんが注射針を鎖骨中線第二第三肋骨上縁を穿刺して一時的な脱気をする方法がありますが根治術ではありません。

完全に治すには胸腔ドレーンを挿入して完全に脱気し肺が膨らむのを待ちます。

現場ではDrヘリやDrカーを呼んだ方が良いくらいの緊急度と重症度が高いのです。

病院での緊張性気胸の診断としてはレントゲン検査や呼吸音などから診断します。先ほどもお伝えいたしましたが緊張性気胸は一刻の猶予がありません。所見や器具が揃わなくても緊張性気胸が疑われたらレントゲン写真を撮影するよりも前に処置をすることが重要です。

緊張性気胸の禁忌としては呼吸困難があるため気管内挿管をした時に人工呼吸器に接続しようとしますがこれは実は禁忌なのです。緊張性気胸は人工呼吸をしてしまうと漏れた胸腔内の空気の量が増えてしまい状態をさらに悪化させてしまうのです。

緊張性気胸の特徴的な症状とは

胸痛や呼吸窮迫とともに循環不全として頻脈や血圧の低下がみられます。頻脈から突然徐脈になることもありそうなってしまうと心肺停止までは時間がかかりません。

身体所見としては胸部の視診で胸郭膨隆、頸静脈の怒張、聴診においては左右のどちらかの呼吸音の減弱や呼吸音の消失が見られます。触診では皮下気腫、気管変位、打診上では鼓音が聞かれます。

もし緊張性気胸を疑ったら

まず病院外で救護する場合は自分自身の安全を確保し救護にあたります。傷病者の意識がある場合はどのようにしたら楽な体位になるかを聞きできる限り楽な体位にします。そして速やかな救急システムへの通報です。

病院内だったら胸腔ドレーンの挿入がすぐにできるように準備しますが緊急脱気の準備もしておきましょう。ポータブルレントゲン撮影の準備もいうまでもありませんね。

緊張性気胸は初期症状として心タンポナーデと症状がよく似ているため鑑別をする必要があります。場合によってはエコー検査器が必要になる場合があります。

このように緊張性気胸は急いで病院に運ばれても処置や診断が遅れたら手遅れになる場合があります。緊張性気胸の病態生理、処置の方法などを身につけて対処していただけたら幸いです。

参考:一刻を争う緊張性気胸の看護【症状と治療方法について】