外傷死を防ぐJPTECの活動内容

交通事故や転落事故など外傷は時として命を脅かします。欧米などでは重度な外傷を専門に取り扱う外傷センターがありますが日本ではまだ皆無に等しいです(なんとか現在は救命センターが担っています)。

JPTECという概念が生まれた背景

日本は戦後において著しい高度経済成長を成し遂げてきました。建物の建設、物流などの交通の発達によりそれらの仕事に従事する人たちの労働災害や交通戦争と言われるほど多かった交通事故などで残念ながら命を落としてしまう方が多くいました。

消防庁の救急搬送制度が出来てから平成3年にやっと長い年月を経て救急救命士制度ができてわずかながらの医療行為ができるようになりました。それまでは止血や固定などの本当に簡易的な処置しかできず血圧測定すら救急隊はできませんでした。そんな中でも怪我人を一生懸命に処置をして病院に搬送しても亡くなってしまう方が多くいました。

検証した結果防ぎ得た外傷死が多いことがわかりました。

これはもしこうしていたらとかこんな処置をしていたら死は免れたかもとかすぐに手術ができる病院に搬送していたら助かったかもなど決して間違ったことをしていたわけではなかったのですが、一刻を争う重度な外傷患者のプロトコルが出来ました。そして日本の医療法、医師法に抵触しないJPTEC(ジャパン・プレホスピタル・トラウマ・エボリューションアンドケア)が誕生しました。日本語にすると病院前救護の事です。

現場滞在時間は5分以内

人間の脳細胞は一般的に3分間酸素が途絶えてしまうと不可逆的になり予後は非常に悪くなります。重度な外傷も例えるとそんな意味合いもあります。外傷により手術が必要な場合1時間以内に始めないと助かるはずの命も助からなくなります。もちろん早ければ早いほどこしたことはありません。

高いところからの転落、銃槍(日本では少ないですが)、車に数メートル以上跳ね飛ばされた、同乗者の死亡、救出に時間がかかった、体幹が挟まれた、刺創など決まった定義はありませんが高エネルギー外傷(体に強い外力が加わりそれにより体が損傷を受けた状態)とそれらは言われています。

そしてロードアンドGOという言葉が生まれました。生命を脅かすことのない処置や観察は省いてできるだけ短時間に観察処置を行い救命センターなどの高次医療機関に搬送するという意味があります。

これがロードアンドGO!

救急外来やER、救命センターなどに勤務しないと聞いたことのない言葉ばかりだと思います。そこで模擬救急現場を作りました。歩行者が横断歩道中に車に跳ねられたという入電がありました。救急隊が到着すると仰向けで寝ていて加害者が付き添っていました。頚椎損傷が疑われるので頭部保持して簡単な観察をします。

気道は開通しているか?呼吸数は?肌の色湿潤や脈の速さを見てショック状態かどうかを観察します。ショックあるいはショック状態が疑われた時点でロードアンドGOを宣言し救急隊員どうしで意識の共有をします。すなわちこの傷病者は重症だぞという認識を持ちます。酸素の投与をしたり頚椎カラーの装着をして頭のてっぺんからつま先まで外傷の有無を観察します。擦り傷や少しくらいの出血などは命を脅かしません。そのような処置は省きます。

お腹に打撲痕があり盛り上がりがあり圧痛があるのがわかりました。そして全脊椎固定を行い全身を一本の丸太にたとえて言われた言葉ですが丸太のように体を一本の丸太のように固定を施し車内収容してこの場合の搬送先は救命センターになるので高エネルギー外傷、ロードアンドGOであることを伝え傷病者の年齢や性別、概要、行った処置も伝えて搬送します。

文章に書くともっと書くことがあるのですがここまでの一連の流れの観察処置を5分以内で行います。

JPTECが防ぎ得た外傷死を減少させた

ここでは高度な医療処置は行いません。例えば点滴をする、強心剤の注射をするなど。ポイントは素早い観察判断、素早い処置、素早い適切な医療機関の搬送が重度外傷から命を守ります。看護師でもこのJPTECプロバイダーの資格を取ることはできます。

参考:病院前外傷救護と看護師【JPTECの受講のすすめ】

私は今プレインストラクターでインストラクターになるべく勉強中です。皆さんも一緒に勉強してみませんか?