印象に残った患者さん【てんかん発作、家庭内暴力の患者さん】

看護の仕事をしていて忘れられない患者さんや、いい意味でも悪い意味でも印象に残った患者さんはいると思います。

今回はそんな印象深く忘れられない患者さんのお話です。

てんかん発作の患者さんの看護

自動車を運転していて、てんかん発作を起こしてしまい人身事故を起こしてしまったCさん。この方自身も肋骨を骨折するという大けがをしてしまい入院しました。

約一週間の入院でしたが、退院の日、警察が迎えにきてそのまま業務上過失傷害で逮捕され警察署に連れて行かれました。Cさんはてんかんの薬を内服しなければ行けないのに怠薬をして発作を運悪く運転中に出てしまい意識を失い停車中のオートバイにつっこんでしまい相手に大けがをさせてしまったのでした。

手錠は院内ではされませんでしたが屈強な警察官が五人くらい周りを囲みながらパトカーまで連れて行きました。

急性硬膜外血腫の患者さんの看護

次は急性硬膜外血腫で大けがをして頭の手術を受けたDさんのお話です。Dさんは救急車で運ばれてきました。

なんと頭を就寝中にとんかちでたたかれたとのことでした。

意識はもうろうとしていてたくさん頭から出血し血圧もすごく低い状態でした。衣服も顔も頭も血だらけで救急処置室のタイルばりの床までもが血の海でした。私はそのとき手術室の勤務も兼任していてこの患者さんは絶対に手術になることを確信しながら救命処置をしていました。

頭のCTの検査では急性硬膜外血腫になっていて脳をかなり血腫が圧迫していました。医師も救命したところで傷害はかなり高い確率で残るだろうと言いました。手術も大変でした。輸血もたくさんしながら血圧を維持し割れて破片となった骨が一部脳に刺さるようになっていました。

修復し手術が終了してからICUに入室するまで十時間はかかってしまいました。

ICUに入って少し落ち着いたところで警察がきてDさんの様子を聞きたいと申し出がありました。詳細は処置が忙しく詳しくは知りませんでした。

でも衝撃の真実がわかってしまったのです。Dさんは酒乱でお酒を飲むといつも暴れたり暴力をふるうことが日常茶飯事でした。

私の病院に運び込まれる前まで居酒屋でビールや焼酎を飲んで帰宅したところ、家には奥さんがいてその奥さんに飲んで帰ってきたことを注意されカッとなり殴る蹴るの暴力をふるってしまったそうです。奥さんは酔いつぶれたDさんを発作的にトンカチで頭をたたき殺そうとしたとのことでした。

ICUでは鎮静がかかったまま人工呼吸器につながれていて懸命に私たちは救命処置や看護をしていました。予後について大変厳しいものと脳神経外科の医師から警察官に話をしていました。奥さんは傷害の現行犯で身柄を拘束されてしまい本日中には逮捕状が発行され逮捕されるとのことでした。

重傷を負ってしまったDさんに最初は同情をしましたが、そのときは奥さんにも同情をしました。日常的に暴力をふるわれていて怖かっただろうな、痛かっただろうなと心より思いましたがやってしまったことはよくありません。何か別の方法で解決をしなければ行けなかったのではと強く思いました。

Dさんも暴力をしてしまったことには非があると思います。どちらかが正しいとかどちらかが悪いとかは言えませんでした。手術の日から三日経過しそろそろ鎮静を解除し脳の残存機能を確かめなくては行けないときが訪れてしまいました。

一生懸命にみんなが力をあわせて救った命どうか脳死ということにはならないでほしいと強く祈りました。鎮静を解除して六時間が経過したでしょうか?手と足がかすかに動いたのを見たのです。それが段々強くなってきました。まだ開眼は見られませんでしたがバイタルサインも落ち着いてくるようになりました。

結局Dさんは半年の入院、治療を経て退院しました。しかも自分の足で歩いてです。そして刑務所にいる奥さんに心からお詫びをして一緒に人生をやり直したいと思いを告げられました。このときほど看護師をしてよかったな、命を救うお手伝いが出来てよかったなと胸がいっぱいになりこの出来事は強く印象に残り忘れられません。