非常勤で精神科看護師として閉鎖病棟に勤務したときのこと。

精神科というと怖いとか暗いとイメージを抱きがちで若い看護師さんは敬遠してしまう方も多いと思います。

私は急性期の病院ばかり渡り歩いてきました。

でも人間不信になってしまい少し休んでいた時期があります。

その時、非常勤ですが一度だけ精神科に勤務したことがあります。

以前、精神科看護の役割について【精神科看護師になるためには】の記事でも触れましたが、その時のことを詳しく書きたいと思います。

これから精神科に勤務してみたい精神科の病院はどんなところなんだろうと考えている方たちの参考になれば幸いです。

未知の世界だった精神科 閉鎖病棟

非常勤で勤務して最初に配属されたのは男性の閉鎖病棟でした。閉鎖病棟て何だろうと感じるかもしれません。

そこは鍵がないと入れない病棟です。その反対に鍵がないと出れない病棟です。その鍵を預けられました。

そこの病棟婦長(当時は師長ではなく婦長と呼ばれていました)に

「この鍵は患者さんを守るための鍵です。管理は厳重にしてください。万一、院内院外で鍵を紛失してしまった場合、必ず隠さずに申告してください」

その瞬間とても緊張しました。

病棟に入る前に必要なオリエンテーションを受けました。

患者さんは長期入院している方ばかりでした。精神分裂病(現在は統合失調症)躁鬱病、アルコール中毒の方達が入院していました。

怪我や手足の麻痺があるわけではないのでトイレに行ったり食事に行ったりなどの日常生活は自立された方ばかりでした。

「これなら楽勝じゃない!」心の中で密かに思いました。

でもそれはすぐに覆されました。

病態が目に見えない

一般の病院なら投薬や手術、リハビリなどを経て患者さんが元気になっていく姿が見えて治っていくところもはっきりわかりますし、悪いところも画像や検査データそして肉眼で見ることができます。

ところが当たり前の話ですが精神の病気というものは目には見えません。薬物療法や精神療法がメインですがよくなっているのか悪くなっているのか全くわかりませんでした。

自室で独語(ドイツ語という意味ではなく独り言のことです)が激しい方、誰もいないのに誰かと話している方、妄想の激しい方幻覚や幻聴のある方。症状は様々ですが把握するのはとても難しいと思いました。

精神科看護師の業務の内容は?

朝病棟に入ると夜勤者から申し送りが始まります。それから各部屋の巡視をして保護室(症状の重い方を収容する個室)も見回り環境整備のお手伝いをします。

全部看護師側がしてしまうと残存能力を削いでしまうことになってしまうので促しをメインに行います。

作業療法や精神療法がある方たちは別にある棟で行うため一旦閉鎖病棟から出て移動します。出る前に人数の確認をして鍵を開けます。

外に出なくても移動ができれば一番いいのですが古い病院だったのでそうは行きませんでした。特にそのままどこか行こうとする患者さんはいなかったのですが緊張したのをよく覚えています。

午前中はあっという間に過ぎてしまいもう昼食の時間になってしまいます。

一人一人に昼食が作られているので患者さんが昼食が積んでいるワゴンまで取りに来ます(朝食や夕食も同じです)。食事が終わったら投薬です。水の入ったコップを片手に持ち患者さんが薬を飲みに並んで来ます。

口に看護師が直接入れるか自分で飲める方は手渡しでお薬を内服します。しかし中には飲んだふりをして洗面所やトイレで吐き出す患者さんもいるため内服したかどうかこの場合も厳重にチェックします。

看護師も交代で休憩を取り午後の業務に備えます。

患者さんたちも午後の作業療法や精神療法があるのでその間休んだりします。必要に応じてバイタルサインを測定したりします。当時は電子カルテなんてどこの病院でも導入していなかった時期だったので手書きでボールペンを使用して記録をします。

夕方になると夜勤者が来て申し送りをします。看護師一人と助手一人で勤務します。

精神科に勤務して思ったこと

現在は精神科のお薬もすごく良くなって大暴れしたりする患者さんは少なくなったと聞いています。

私が勤務するERにも時々精神科の患者さんが訪れたりします。

怖い暗いというイメージはぬぐいきれない方も多いと思います。

しかし私は目に見ることができない疾患が多い精神科看護。看護師の経験と勘と看護技術と五感を使って看護することの重大さと大変さ、そして大きな魅力を感じることができました。

どこの場所にいても精神科の患者さんに接することに対して躊躇することなく自信を持って看護することができる。

そしてこの魅力を多くの看護師さんに知っていただけたらと思います。

こちらも⇒精神科看護師としてアルコール中毒の患者さんに看護対応したときの体験