救急現場の瞳孔不同観察方法 ~脳ヘルニアの重要な症状~

救急の現場では意識障害や頭部外傷、頭蓋内疾患を疑う場合は必ずと言っていいほど瞳孔の大きさや左右の瞳孔の大きさに左右差がないか?対光反射はきちんとあるか?をチェックします。

ヨッシーは右も左も分からない新人時代に脳外科病棟に配属された時先輩看護師から

「○○号室のKさんは脳梗塞二日目だけど瞳孔不同はどうだった?」

と聞かれてヨッシーは

「瞳孔不同てなんですか?」

と逆に聞いてしまいすごく怒られた思い出があります。

この対光反射についてお話をさせていただくと瞳孔の大きさは光が当たらない暗い状態では大きく広がり明るいところでは小さくなります(ヨッシーが受けた看護師国家試験に出題されました)。

視神経から入った光の刺激に応じて動眼神経を刺激して瞳孔を縮小させる反射のことです。


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瞳孔不同が起きるときはどんな時か?

まず片方の動眼神経に障害が起きた時、片目から光などの刺激が入らなくなった時(眼底出血、網膜剥離など)。

そして臨床でとても重要で良く見受けられるかもしれない脳梗塞や脳内出血、脳腫瘍などがある時です。

これらの場合脳浮腫が大脳半球で発生します。この脳浮腫が起きれば頭蓋内圧亢進が伴ってしまいます。そうすると脳の一部がテント切痕に入り込むようになりヘルニアを起こします。

動眼神経は中脳から出ていてテント上を走っているので脳ヘルニアで中脳を押し出す形となり神経が押されて機能しなくなりそのため瞳孔不同が起きてしまいます。

瞳孔不同が見られるとなぜ危険なのか?

頭蓋内圧は脳、血液、髄液によって一定の圧力に保たれています。いずれのこれらの体積が増してくると頭蓋内圧が亢進してしまいます。

頭蓋内圧が亢進されると脳がその圧力から逃げるために移動を開始して同じ頭蓋内にある脳を圧迫したり損傷させてしまいます。

この状態を脳ヘルニアと呼んでいます。

脳ヘルニアとは

ヘルニアとはラテン語ではみ出したとか飛び出てしまったという意味があります。腰椎ヘルニア、腸へルニアなども聞いたことがあると思います。

頭蓋内は小脳テントという硬膜で仕切られています。

このテントの上には左右の大脳半球ありテントの下には小脳が存在しています。

大脳から脊髄につながる脳幹はテント切痕と呼ばれる穴を通りテント下では小脳の前方通り頭蓋骨の下面の大後頭孔という穴から頭蓋骨より外に出て脊髄へと移行しています。

通常の瞳孔の大きさは正常が3〜4mmで2mm以下は縮瞳、5mm以上は散瞳と言います。よって瞳孔不同は主として頭蓋内圧が亢進していることにより動眼神経が圧迫されていることを指しています。

これにより対光反射の減弱や瞳孔不同は脳ヘルニアを起こしかけている重要なサインです。私たち看護師はこの患者さんの生命を脅かす瞳孔不同を見逃しては絶対にいけません。

瞳孔不同の0.5mm未満の左右差は生理的な範囲内であり病的な意義はないとされています。

いずれ延髄にある呼吸中枢で障害を生じてしまい呼吸抑制が起きてしまいます。脳の障害で見られる呼吸異常はチェーンストークス呼吸は主に両側の大脳半球の障害で見られる呼吸異常です。

中枢神経性過呼吸は中脳下部や橋上部の障害で見られます。吸気時休止性呼吸は橋中部、下部の障害で見られます。群発性呼吸は橋下部や延髄上部の障害で見られます。

失調性呼吸は延髄の障害で見られます。これらの異常呼吸はいずれ呼吸停止を招いてしまう恐れがあるので原因の検索、治療と共に気管内挿管し人工呼吸器管理をしなければいけなくなります。

瞳孔不同の診察は慎重に

瞳孔不同はこのような危険な頭蓋内圧亢進の一つのサインです。この行き着く先は脳ヘルニアであり脳ヘルニアに至ってしまうと患者さんは死にいたってしまいます。

このように瞳孔不同からたくさんの事柄をアセスメントして患者さんの状態を迅速に判断、把握して治療につなげていくことが重要だと考えます。

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